インドEVライトモビリティ産業躍進の背景と課題

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経済発展途上にあるインドでは、他国と比較し、電気自動車(以下、EV)の導入が急速に進んでいます。その中でも現在テラモーターズの注力している2輪・3輪などのEVライトモビリティセグメントが、市場全体の成長を牽引しています。

2019〜2020年のインドにおけるEV販売台数は380,000台を記録しました。インドEV市場は2020〜2027年の間に44%のCAGRで成長し、2027年には年間販売台数が634万台に到達することが予想される市場です。

ここでは、インドにおけるEVライトモビリティ市場を中心に、EV市場成長の要因である「EV導入を必要とする社会課題」、「EV導入が実現しやすい市場特性」、そして「中央政府および州政府による後押し」について詳しく解説します。

EV導入が加速するインドの背景

インドのEV市場が成長する背景には、EV導入を必要とする深刻な社会的課題が背景にあります。

深刻な社会課題

1. 世界第3位の石油消費国が抱える貿易赤字

インドは、米国・中国に続き、世界第3位の石油消費国であり、石油輸入による貿易赤字を抱えています。インドの急速な経済成長とともに、石油製品の需要は、10%の年平均成長率(CAGR)が予測されており、2021年〜22年までに244.960トンに達すると推定されています。

この貿易赤字からの脱却を目指すインド政府は、2022年までに石油とガスの輸入依存度を10%削減することを目指しています。

約95%がガソリン車を占めるインドのモビリティ産業では、ガソリン車を規制し、石油消費を減らすことが貿易赤字解消の一つの解決策となっています。

2. 都市化による渋滞・大気汚染の悪化

近年、インドでは農村部の人々が雇用を求めて都市部に移住する都市化が進んでいます。インドの経済発展の過程において重要である一方、エネルギーや交通インフラに負担がかかり、その結果、渋滞や汚染問題を引き起こしています。

1901年のインド国勢調査によると、インドの都市部に居住する人口は11.4%から2001年には28.53%まで増加しました。2017年の世界銀行の調査では34%が都市部へ居住したことがわかりました。今後ますます都市化は加速することが予測されています。

昨年、もっとも大気汚染が深刻な地域であった、デリーの北東に位置するウッタープラディッシュ州は、産業の発展により人口増加が続いたことで、モビリティの比率が上がっている地域です。2020年12月のPM2.5は、WHOが許容するレベルの8~11倍となる178.9を記録しました。その他デリーを含む都市部も、世界で最も汚染された20都市のうち14都市にランクインしています(2020年WHO調べ)。

大気汚染に関連した死亡者数は、世界でも最も多く年間200万人を超えており、インドは大気汚染対策として、国内総生産(GDP)の5.4%に相当するコストを負担しています。

国民の健康および資源の節約のためにも、大気汚染の原因の一つとなっている、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、鉛化合物、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)を含む自動車排出ガスの削減となる、自動車のEV化が一つの解決策となっています。

参照元:東京都環境局出典「微小粒子状物質(PM2.5)とは」を自社で作図
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/torikumi/pm2_5/pm2_5.html#:~:text=%E5%BE%AE%E5%B0%8F%E7%B2%92%E5%AD%90%E7%8A%B6%E7%89%A9%E8%B3%AA%E3%81%A8,%E3%81%8C%E6%87%B8%E5%BF%B5%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

3. 気候変動への対策、脱炭素による世界へのコミットメント

気候変動の一つの要因である温室効果ガス排出量が、現時点で世界4位のインドですが、2027年に中国を抜き世界一の人口が予測されており、今後の経済成長に伴う個々のライフスタイルの変化は、環境問題へ与える影響力が大きくなっていきます。

国別 温室効果ガス 排出

参照元:経済産業省資源エネルギー庁出典を自社にて作図
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html

パリ協定「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という長期目標にあわせて、インドは2018年時点、2030年までに温室効果ガス排出量を2005年比で33%〜35%削減することを約束しています。

モビリティの走行に伴う温室効果ガスの排出は、ガソリンを使用するガソリン車及び軽油を使用するディーゼル車からのものが主となっており、巨大なモビリティ市場を保有するインドでのEV化は、目標達成に必要不可欠となっています。

EV成長率が高い社会背景

EV車の導入がなかなか進まない日本と比較し、インドモビリティ市場は、他国と異なる「導入が実現しやすい市場特性」が高い成長率を牽引しています。

ライトモビリティ率の高い市場特性

インドのモビリティ市場のセグメント別割合は世界の大半の国と異なり、ライトモビリティである2輪、3輪が全体の83%を占めています。

インド モビリティ市場

参照元:2012年〜2018年の販売データに基づいたデータよりNITIが算出、自社にて作図

1. 2輪車:全車両数の79%
2. 3輪車(乗用車と貨物車):全車両の4%。
3. バスおよびトラックなどの大型貨物車:車両総数の3%。
4. エコノミー四輪車(100万円以下の車):総車両数の12%。
5. プレミアム四輪車(100万円以上の車):全車両の2%。

インドの消費者行動における購買意思決定要因は、使用用途を満たした上での経済性です。その点で、ライトモビリティセグメントは、消費者が、EVを使用することで、ガソリンと比べて燃料代が節約でき、経済的メリットを享受できることが他のセグメントと比較し、大きくEV市場を牽引する要因となっております。

特に、3輪車は、ガソリン車と比較してEV車の経済的メリットが高くなる下記3つの条件を満たしています。

EV三輪 インド 受け入れ条件

初期購入時の費用
政府の需要者向けインセンティブ施策、税制や助成金等を考慮すると車体価格がガソリン車と同等価格となる

購入後のエネルギー費が安い
個人移動と比較し、一日の使用距離が長い商用車では、エネルギー費用を抑えることによるラニングコスト削減におけるメリットが大きい

充電インフラ
移動距離が100キロ以内/日と、中・短距離移動のため、1日1回の充電で対応可能

こういった背景から、インドでは、EV3輪の販売が好調で、3輪新車販売台数のうち約15%とEV導入率がもっとも高くなっています。2輪車は、初期購入価格が依然ガソリン車より高くなっていることが弊害となっており、現状2輪新車販売台数の内、約1%弱となっています(2021年当社調べ)。

インドKPMGは、独自の分析に基づき、2030年までにEV2輪の普及率は2輪市場では25〜35%、EV3輪では3輪市場全体の65%〜75%になると予測しています。

インドEV市場を牽引するライトモビリティ消費者セグメント

インドのモビリティ産業は、近年、成長率では鈍化しつつありますが、販売台数では世界有数の市場です。2020年度のインド国内のモビリティ販売台数は2,150万台で、前年の2,620万台と比較しても遜色はありません。

その中でも、ライトモビリティ市場の割合が83%であることは前述しましたが、これらの消費者である低・中間所得層は、コロナ禍においても12.5%の経済成長率(2021年3月IMF予測)と予測される力強い経済成長とともに、さらに拡大していくことが予測されています。実際に、2000年から2020年の間で、低所得者層の22.5%が中間所得者層の世帯年収を得るようになっています。

*低所得者層:世帯年収が5,000ドル以下、中間所得者層:世帯年収5,000ドル〜10,000ドルと定義

デジタル革命によるシェアードモビリティの急速な発展

GPSを搭載したスマートフォンとそれに付随するモビリティアプリケーションの台頭により、インドのモビリティはデジタル革命を遂げました。このデジタル革命により、既存の交通資産やインフラの活用が効率化しています。

ガソリン車に比べ、相対的に高い車体価格を低いランニングコストで補う仕組みであったEV車にとって、このシェアードモビリティによる利用率の向上(アイドリング時間の短縮)は、内燃機関との比較によるコストメリットの点で、より優位となり、EV車にとって有利な環境が整いつつあります。

インドでは、Uberの参入によりシェアードモビリティが2015年移行爆発的に普及しました。これが、インドの移動インフラの仕組みに変革を起こしました。そして、これらインドのシェアードモビリティサービスには、2輪・3輪の両方が含まれている点がインドの特徴です。

2015年に1億3000万回だった乗車回数は、2016年には5億回に増加し、商用無線タクシーが市場全体の72%を占めるようになりました。このようにインドでは、シェアモビリティの普及に伴い、車両の商用利用が増え、低い維持費(バッテリーの充電費用)の経済的メリットを求め、EVの車両利用率が高まっていることが、EV化の追い風となっております。

インド中央政府・州政府のEV関連施策

インド中央政府は、EVを起点に国内外から電動車関連の製造投資を誘致し、雇用創出、輸出拠点としての経済成長を目指しています。

ここまで述べてきたように、国の経済、国民の健康などに直接関わる深刻な問題から、インドは解決策としてクリーンエネルギーとなるEVの導入支援策を提案し、本格的な導入に力を注いできました。その成果もあり、EVライトモビリティの成長率は20%(2019年〜2020年)と堅調です。

また、今後、アジアにおけるプレゼンスを高めていくために自国がリーダーシップを発揮できる新たな産業としてEV産業を成功させたいという狙いがあります。過去にIT産業を自国産業として成長させた中央政府の功績を見ると、政府施策の実行力の高さが伺えます。

インド政府が目指すEV化実現のための具体策

第1次モディ政権下において2014年9月にインドの製造業振興策「Make in India」というインドを世界における研究開発および製造業のハブとすることを目標とした産業政策を発表しました。

モディ首相の諮問機関である国家改造評議会(以下、NITI Aayog)は2019年6月、2023年までに三輪車を、また2025年までにエンジン容量150cc未満のすべての二輪車のEV 化を目標に掲げ、その後、段階を経て下記施策を打ち出し、実行に踏み出しています。

税制優遇
・消費税(GST)の優遇:ガソリン車28%に対し、EVは5%
・EV 向け特定部品の輸入関税の無税化(2019年度予算案)

ガソリン車規制強化
・2025年より150cc以下二輪はEVのみ販売可能
・2020年4月よりガソリン規制がBS4よりBS6に強化

補助金支給
・リチウム中心に現地組立のものに補助金支給
・現在進行中のEV促進の予算は、約1500億円 (FAME第2フェーズ:19年4月~22年3月迄)

インセンティブ導入
需要インセンティブは、消費者となる購入者・エンドユーザーがハイブリッド車や電気自動車をより広く導入できるように、購入価格を前もって引き下げるという形で提供され、インド政府から製造業者に払い戻されます。

インド中央政府各施策

2015年「FAME India (Electric Vehicles in India)」発表
インドにおけるハイブリッド車および、EVの迅速な導入と製造を目的としたEVとハイブリッド車の促進を目的としたスキーム。EV購入促進のための、需要インセンティブ、充電ステーションのネットワークの構築、広報活動、IEC(Information, Education & Communication)活動を含むスキーム、運営が述べられています。

2018年 「ゼロエミッション・ビークル(EV)」を発表
ゼロエミッション・ビークル インド EV
環境面改善にフォーカスした、モビリティ産業のゼロ・エミッションを実現するための施策。

2019年「FAME(Electric Vehicles in India)-2」を発表
大衆に手頃な価格で環境に優しい公共交通機関を提供することを重視し、このスキームは主に3輪、4輪、バスの各セグメントで公共交通機関に使用される車両、または商業目的で登録された車両に適用されます。ただし、個人所有の登録済み2輪車も、大衆向けセグメントとしてこのスキームの対象となっています。

政府は、2019年4月1日から3年間、10,000億ルピーの予算でFAMEスキームのフェーズIIを承認。本予算の実行プランでは、7,090台のEVバス、50万台のEV3輪、55,000台のEV4輪乗用車(ストロングハイブリッドを含む)、100万台のEV2輪の補助金を支援することで、需要を創出することなどを発表しました。

具体的には、電気自動車、その組立品・サブ組立品、および部品の国産化を促進するための段階的製造、需要インセンティブの提供、EV部品の段階的製造プログラム、適格性証明書の発行プロセスの明確化などが述べられています。

2020年4月 BS6適用  
2020年4月1日以降、自動車メーカーはBSVIに準拠した排ガス中の窒素酸化物(NOx)を、 ガソリンエンジン車では約25%、ディーゼルエンジン車では約70%削減された車両のみを国内で販売することが認められており、これにより、ガソリン車の価格が上昇、EV車との価格差がほぼなくなりました。結果、ガソリン車からEVへの移行を後押ししています。

インド政府は、「Make-in-India」施策においてEV産業におけるグローバルなサプライチェーンの再編成に合わせて、自立と雇用創出という2つの目的を達成するために、生産の現地化を強力に推進しています。これにより、充電やバッテリーの製造など、EVのバリューチェーン全体でインフラを整備する機会が創出されています。
(Make in Indiaについては次回レポートにて公開予定)

インドEV3輪の現状と課題

ここからは、テラモーターズがトップシェアを占めるEV3輪セグメントを取り上げ、現場の現状と課題について解説していきます。
(EV2輪については、次回レポートにて公開予定)

【現状と課題】品質問題

2013年当初のインドでEV3輪導入期に販売された多くのEVは、初期費用、航続距離、速度、電池寿命、電池技術などの点で、ユーザーの期待を裏切る結果となりました。

多くのメーカーが自社開発や部品製造は行わず、中国やインドのサプライヤーからキットすべての仕入れを行い、そのままの品質でインド国内にて組み立てを実施し、販売されてきました。これにより、低価格な粗悪品がインド市場に多く流通しました。

ここ数年で、安定した品質を提供できるメーカーによってその数は淘汰されてきていますが、今後も、ユーザの安全と一定年数の使用を担保する品質へ向上させていくことは、メーカーの課題となっています。

【現状と課題】インフラ整備

現在、多くのEV3輪ドライバーは、自宅で充電を行い、EV3輪を使用しています。先述のように、1日の走行距離が100キロ以内の場合は上記方法で対応可能です。

一方で、今後、より航続距離が長く、EV車がガソリン車体の真の代替モビリティとなるためには、インフラを整備させ、購買者の心理的な障壁を覗いていくことが、必要とされています。

充電インフラ
充電インフラの整備状況は、民間充電器が大きなシェアを占めていますが、公共の急速充電が増えています。インド政府は最近、24州/UTの62都市で2636の(公共)充電ステーションを認可しましたが、まだまだその数は充分ではありません。

インド政府は、EVの普及を促進するために、公共充電インフラのガイドラインと基準を発表し、公共充電インフラの整備計画を段階的に進めています。

バッテリー技術
インドにおける高度化学電池(ACC)のあらゆる需要は現在、輸入によって賄われています。現在、リチウムイオン電池セルの生産拠点は、中国、米国(北米)、欧州(西欧)、日本、韓国に集中しています。

インドは、リチウムやコバルトなどの主要な原材料を大量に埋蔵しておらず、その供給を他国に依存せざるを得ない状況にあることと、技術力が主な背景です。ACCの輸入依存を減らし、国内における技術力および生産力を強化することが課題となっています。

2019年3月13日、政府は「National Mission on Transformative Mobility and Battery Storage」の概要を発表し、2024年までの5年間の段階的な製造プログラムで、輸出競争力のある大規模な統合バッテリーとセル製造の巨大プラントをインド国内に数カ所開発することを支援するものです。

2021年5月12日には、インド重工業省が、高エネルギーストレージを持つバッテリーの国内生産を促進するために約2700億円のインセンティブを提供するという案を承認しました。

【現状と課題】消費者層の購買機会

EV3輪の消費者層は、顕在・潜在層を含めると世帯年収2,500ドル〜7,500ドルの低・中所得者層です。

EV3輪 購入者

[左図]人口割合参照元:経済産業省出典「医療国際展開カントリーレポート 新興国等のヘルスケア市場環境に関する基本情報 インド編」よりhttps://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_India.pdf

具体的には、現在、テラモーターズのEリキシャを購入する顧客は、人口全体の約29.4%を占める世帯年収2,500ドル〜5,000ドルほどの低・中間所得層です。

ここに、今後販売開始予定のEオートの購入者層である世帯年収5,000ドル〜7,500ドルの中間所得層を含むと、EV3輪全体の市場は、インド全人口の51.4%になります。

世帯年収約5,000ドル以下のEリキシャユーザーが日に稼ぐ収入は10ドル前後。家族を持つユーザーが多く、生活が豊かであるとは言い難く、新車両を購入するための充分な貯蓄はありません。

そのため、インド政府の補助金だけでは、充分な購買決定に至らないことが課題です。これにより稼ぐ道具となる商用3輪の購入機会を得られないことで、貧困のサイクルから抜け出すことが難しい環境にいます。

EV3輪の課題に対するテラモーターズが考案する解決策

テラモーターズでは、インドEVライトモビリティ市場を拡大していくために、まずはEV3輪の浸透を図ることで社会課題の解決を提案しています。上述した課題を解決するために現在、下記のような取り組みを実施しています。

EV3輪の使用用途拡大

 都市部でのラストワンマイル

インドでは、都市部でのラストワンマイルのための交通手段として安価で手軽な3輪がエンドユーザーにとって実用的移動手段とされています。

*ラストワンマイルについては次号にて情報公開予定

3輪は、地理的規模が大きく、バスや電車といったインフラが発展途上であるインドにおいて、オフィスや生活用品店を繋ぐアクセス手段です。駅前には、自動車タクシーと同様に、3輪タクシーが列をなしています。1マイル(約1.6km)100円以下で使用できることから価格に敏感なインド人にとって、日々の生活で手軽に使用されています。

また米国アマゾンなどは、二酸化炭素排出量を削減および配送エリア拡大を目的に、ラストワンマイルの配送にEモビリティを使用する取り組みを開始しています。

テラモーターズでも、都市部の大気汚染の課題解決、雇用拡大を目的に優良ディーラーシップとの連携により、インド全土都市部への販売市場拡大を図っています。

 田舎での移動手段

都市部では、公共交通期間としてメトロ(電車)やバスが走っているところがありますが、多くの都市は田舎では、交通インフラがほぼないに等しい状況です。また、2輪や4輪は、資産に余裕のある個人だけが購入できる移動手段であるため、誰もが使用できる安価な公共交通機関は3輪が、重要な役割を果たしています。これらの車両を早期にリチウムイオン電池を使用したEVに変更することで、多くの人々にクリーンな交通手段を提供することができます。

テラモーターズは、貧困州におけるEV3輪の金融インセンティブを効果的に活用し、EV3輪車を普及させていくことを計画しています。

貧困州EVインセンティブ

Bihar(ビハール)
・州/国道に50km間隔で急速充電ステーションを設置し、250億インドルピーの投資を誘致し、州内の1万人に直接エンパワーメントの機会を創出する
・製造業者への優遇措置 – 印紙税、登録税、SGST(州税)の払い戻し、その他の税制優遇措置を受けられる
・リチウムイオン電池を搭載したEリキシャには、エンドユーザーへの補助金12,000インドルピー(USD170)に加えて、10,000インドルピー(USD140)の特別奨励金を支給する。州は、すべての車両カテゴリーに対して15%のエンドユーザー補助金を挙げている

Uttar Pradesh(ウッタープラディッシュ)
・資本利子補助金、インフラ利子補助金、産業品質補助金、印紙税・電気料金の免除、SGSTの払い戻しなど、EV製造ユニットに対するインセンティブを提供
・目標2024年 – 0.2百万台の充電ステーションを建設(急速、低速、交換)
・廃棄物処理施設を設立するための償還形式のローンの年間利子を50%補助する

これらの地域における、EV3輪の普及はエンドユーザーの生活利便性の向上だけでなく、ドライバーに働く機会を提供し、雇用創出にも貢献しています。

インド政府と連携した新業界のルール作り

インドにおけるEV産業は、まだ導入期にあります。そのため、EVに関する中央政府および州政府が定める規制は、日々変化しています。

EV主要メーカーは、購入者・エンドユーザーにとってより良い市場を目指し、これらのポリシーの発展的な構築をともに進め、かつこれらの規制に即した自社のビジネスモデルやバリューチェーンの構築をスピーディに対応していくことが求められています。

テラモーターズは、インドEV3輪シェアNo.1であるプレゼンスを活かし、インド中央政府・州政府と連携し、国とユーザーにとってよりよいEV産業を創造するルール作りに貢献しています。

EV業界におけるエコシステムの構築

EVの普及を現実的に促進するためには、中央政府・州政府、そしてメーカーが、統合的に協力し、新産業のエコシステムを構築することがEVユーザー拡大に求められています。

テラモーターズは、現在、主に下記施策を実施することで、EV産業のライトモビリティ市場のエコシステム構築に貢献しています。

① ファイナンスエコシステム

貯蓄が難しく、社会的信用力の低さやローンシステムへそもそもリーチすることが難しい低所得者層に対し、金融機関と連携し、マイクロファイナンスを提供しています。

これは、低所得者層が、EV3輪を購入しやすくなっただけでなく、ガソリン3輪と比較し、購入後に高い収入を得られる仕組みです。

②  新たな稼ぎ方の提案

経済性を重要視するEV3輪ドライバーにとって車体費の逓減や、購入後の収入の安定は、購買意欲を促進する鍵となっています。テラモーターズはこのニーズに答えるために新たなビジネススキームを提案していきます。

Uberとの提携:
現在、テラモーターズはUberとの提携を進めています。テラモーターズのEV車体購入ユーザーは自動的に、Uberのプラットフォーム(乗客との効率的なマッチングプラットフォーム)を使用することが可能になり、ドライバー単独で稼ぐより、効率的に収入の向上が見込めます。シェアードモビリティが拡大するインドにおいて、Uberのプラットフォーム等を使用するためのノウハウなどのトレーニングを含めてトータルサポートを提供してもらえることはドライバーにとって大きなベネフィットとなります。

広告モデル:
車体の背面に広告パネルを設置し、パブリックスペースにおける移動型広告スペースとしてEV3輪ドライバーに広告収入の提案を検討しています。

インド EV テラモーターズ

広告を提供し取得したビッグデータを活用することで、将来的には、ドライバーが広告収入によって移動コストにかかる費用をまかないほぼゼロにすることを目指しています。

③ 使用済み製品と廃棄方法

3輪EVが普及することで起きている課題が、使用済み製品の二次利用や廃棄方法、リサイクル問題です。

テラモーターズでは、この課題解決の足がかりとしてEV3輪市場の二次市場(中古車販売)の構築に着手しています。インドの社会問題である、ゴミ問題や産業廃棄物による汚染問題にも寄与していくことを目指しています。

同時に、これは現在の購入者層よりも、さらに低所得である潜在顧客層にEV3輪の購買機会を提供し、雇用機会を生み出すことにも繋がります。

④ バッテリーパワートレインの自社開発と高技術化

業界の課題でもあり今後EV産業が拡大するために重要ファクターであるバッテリーの自社開発にも着手しています。

EV3輪においては、市場で受け入れられる価格の中で最大限の走行可能距離の実現を目指し、かつメーカーとして決めた距離をできるだけ長い期間、実績として出し続けることです。

経済性がもっとも重要であるユーザのニーズに応えることがインド市場生き残りの肝であるため、自社開発によってバッテリーの安定的な品質、及びスペック向上を実現していきます。

⑤ インドEV産業の技術向上と雇用創出

テラモーターズでは、耐久性が高く、競争性のある価格帯で販売するために、現在、中国50%とインド50%から部品を調達し、自社設計で組立を実施し、品質テストをクリアした製品を販売しています。

厳格なサプライヤーの選定とサプライチェーンマネジメントを実施することで、調達価格を押さえ市場ニーズに答えた価格提供と、5年間使用可能な品質の両方を実現しています。

テラモーターズ サプライチェーン

今後は、Make in India の施策にそって、インドでの部品調達100%を目指すことで、インドEV産業の技術力向上、雇用創出にも貢献していきます。

インドが政府の後押しのある背景もあり、先駆けていくEVライトモビリティ産業は、経済発展によるニーズの高まりとして今後も活況が予測されます。今後、EV車全体が人々の生活へと浸透していく中、テラモーターズが顧客へ提供する価値は、「ガソリン車と比較した、経済性の高い車体提供」、「新しい生活を想起させるブランド価値の提供」です。

この二つの価値を提供するために、車体の高技術化、金融事業の強化、IT技術・サービスとの連携により、「EVを起点としたプラットフォーマー」としての事業価値を向上させてまいります。

【関連記事】
テラモーターズ、今後5年のアジアでの成長戦略【2021年〜5年後の未来】

【参考資料】

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_India.pdf

https://niti.gov.in/writereaddata/files/document_publication/EV_report.pdf

https://energy.economictimes.indiatimes.com/news/power/opinion-why-there-is-no-single-fuel-option-for-alternative-mobility-solutions/79791483

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https://en.wikipedia.org/wiki/Urbanisation_in_India#:~:text=The%20population%20residing%20in%20urban,to%20reside%20in%20urban%20areas.

https://pubdocs.worldbank.org/en/908481507403754670/Annual-Report-2017-WBG.pdf

https://www.iqair.com/world-most-polluted-cities

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